DX化でしばしば勘違いされるのはIT化がさらに進歩したに過ぎないと思われることです。
IT化の主目的は業務の効率化とも言えるものでした。ところがDX化はデジタルトランスフォーメーションの言葉の通り、会社のビジネスモデル自体の再構築を目指しています。IT技術はそのためのツールなのです。
現時点で好調な事業部をDXのために分割して他部門と合わせて再構築が必要となったら、その好調な事業部から大きな抵抗を受けることは容易に想像がつきます。
また、もしIT部門にDX化を任せたら、今まで業務効率を担っていた部門が全社のビジネスモデルの再構築に最適な提案をできたとしてもそれを受けて入れてもらうことが困難なことも想像されます。
考え抜かれたDX化のプランだけでなく、それを全社的なリーダーシップをもった経営者が社員の多くが納得できる言葉で説明すること、それぞれの部門社員の役割をその必然性も含めて説明すること、それがまず前提になります。
リスキリングという言葉が急に有名になってきたのも、そのDX化にともなって必須となる社員の再教育が、今までと次元の違うほどの大掛かりな再教育になるため敢えてリスキリングという新語を作り出したも言えるでしょう。
どんなに優秀な経営者でも自分の会社の社員の声と既存の取引先の声を聴いただけでは最適なDX化とリスキリングのプラン作りは容易ではないでしょう。全く違う視点から、虚心坦懐なアドバイスをもらうことが必要になることも多いと思います。
いくつかの大企業ではIT部門と別に、社長直属のITコンサルタントを雇用しているのはDX化のためもあるのでしょう。ただ、アドバイスは広く社外にも求めたほうが良いことも多いです。
リスキリングをあきらめて、リストラと外部からの雇用を行うと組織の士気が下がってしまう恐れがあります。ここでも経営者が確かなリーダーシップの基に明快にリスキリングの必要性を社員に伝えること、できればそれをそれぞれの社員がこれからの時代のために自発的にやりたいと思えるほどの内容とすること。それらのことが、大切な前提となります。
IT技術の進歩はわずか10年でスマホが世界を席巻した以上の変化を今後も世界にもたらしていきます。変化することは生き残るために必須なのです。